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4.3.5 発光
(1) 生命システムの概要
夜光虫やホタルに代表される発光生物の発光の意義に関しては、照明、自己防衛、固体間のコミュニケーションなど、種々の理由が考えられる。また、発光系の制御に関しても、カルシウムイオンによって制御されるもの、pHによって制御されるものがあるが、その基本原理は酵素を介した一種の化学発光であり、発光の効率がよくホタルの場合には88%にも達すると報告されている。
このような発光生物による発光では、化学エネルギーの光エネルギーへの変換が極めて高効率に行われている。我々が通常使用している電気はそのほとんどが熱として損失しているが、発光生物はこれらのエネルギー変換を常温、常圧で熱による損失なく行っている。
未だ発光過程の詳細は不明な点が多いが、これらの生物発光のメカニズムを学んで、光エネルギーへの高効率な変換が可能になれば人類にとって極めて有用であると考えられる。

 

(2) 学ぶべき生命の機能
発光生物における発光原理に関してはこれまでに反応様式によっていくつかの機構が解明されているが、大別すると2種類に分類される。
そのうちの一つは特にホタルの例でよく研究されている発光の原理で、「ルシフェリン」という発光物質がATPとマグネシウムイオンの存在下で「ルシフェラーゼ」という酵素の作用によって酸化的分解されるときの化学発光であることが知られている。
しかし、このルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を示さないものもあり、オワンクラゲの例に見られる「エクオリン」という発光タンパク質によるものがこれにあたる。この場合は、無酸素状態でもカルシウムイオンの存在で発光作用を示す。発光に関与するタンパク質に発光成分と酸素分子とがあらかじめ活性化された状態で取り込まれているものと考えられる。

 

 

 

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